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白っぽい息が消えるのを眺めていたら、後ろからぱたぱたと足音が聞こえた。 その音が小走りの調子であるのは着物だからだろう。 腰掛けていた縁側から立ち上がり、振り返ると、丁度良く襖が開いた。 そこにいた少女は落ち着いた色合いの着物を身に纏っていて、幼い見た目に反して大人びて見えた。 「虎吉様、虎吉様。雪は積もっておりませんか?」 「桐様、残念ながら積もっておりませんよ」 「まあ。昨夜は随分と冷え込みましたから積もったかと思いましたのに」 「桐様!部屋の中を走らないで下さいと何度も申し上げておりますでしょう!」 「あら、しず」 忘れておりました、と言ってころころと笑う桐に、後から追い掛けて来た少女は眉を寄せて、厳しい目をした。 確か二人は同い年であるはずだが、此方の少女の方が年上に見えると言うか、まるで母親であるかの様にも見えてしまう。 どうやら主人は雪がお好きであった様だと虎吉は二人のやり取りを眺めて笑った。
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