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この屋敷にいる様になって、早くも一週間経った。 主人である少女は思いの外子供らしく、後、少々ではなく結構お転婆であると知った。 その世話役であるしずとは、あの晩の翌日に初めて顔を合わせ、簡単な挨拶を済ませた。 彼女の桐に対する態度が畏まったものでない事実には少し戸惑ったが、彼女達の付き合いの長さを知ると、それもすぐに慣れた。 それと一緒に虎吉には疑問に思う事があった。 それは、どうして桐がこの様な、人が近寄らない屋敷の奥で隠される様にして生活しているのかという事だ。 彼女はもう14歳になる。 それがどうして未だ見合い話もなく、実家にいるのか。 結納はまだでも、御厨家の様な家柄であれば、嫁ぎ先はいくらでも話が上がるだろうに。 それから、虎吉にはどうしても気になる事があって、しかし、それを桐やしずには聞けないでいた。 彼女達の耳には入れたくなかった。 それは、この屋敷で過ごす様になって二日目の朝の事だ。
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