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蘭に付き合って朝の鍛練を終えた直後だ。 桐に似合いそうだと思って摘み取った花を片手に部屋に向かっていると、すれ違った男達が何か囁く様に話し合っていた。 思わず立ち止まったのは、桐の名前が出たからである。 「…あれが、新しく桐様の護衛となった者か」 「まだ少年ではないか…可哀想にな」 「まあ、どうせまたすぐに逃げ出すだろうよ」 ――――…“鬼子”の側にいて耐えられる者はおらん。 虎吉が立ち止まって、振り向いていた事に気付いていなかったのだろう。 彼らは話を聞かれているとも気付かずに、こそこそと話し合っていた。 「あの子供が喰われなければいいがな…」 自分や主人の事を話しているのに、話の先が全く見えない。 どういう意味だろうかと思ったが、呼び止めて聞けば、立ち聞きしていたと知られてしまう。 だから、何も言えないで一週間を過ごした。
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