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猫を見失って、桐が落ち込んだ朝から二日経ち、虎吉は蘭に誘われて剣技の稽古をしていた。 外気は凍る様に冷たいが、身体を動かしている彼らは汗をかいていた。 構えた木刀を振るい、それは難なく避けられる。 続いて降っていた木刀を受け止めて、上からの圧力を押し返した。 互いに五分五分の力量ではあるが、蘭の方が身のこなしが軽い。 一歩距離を詰められ、気付いた時には手から木刀が消えていた。 地面に転がったそれを視界に捕えたその時、目の前に木刀の切っ先が見えた。 僅かに目線を上げると、蘭が相変わらずの無表情で此方を見ていた。 虎吉は両手を肩まで持ち上げると苦笑いして、降参の意を示した。 これで勝敗は5勝4敗になった。
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