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虎吉が汗を拭きながら縁側に腰掛けると、その隣に腰を降ろしながら蘭が彼に聞いた。 「何かあったか?」 「何故だ?」 「全然集中出来ていなかっただろう。隙がありすぎだ」 やはり気付かれていたか。 蘭の言う通り、今日は集中しきれていなかった。 だから勝てなかったと言ってしまえば言い訳になるので言わないが、今日の敗因はそこにもあった。 「何かあったかと聞かれれば、特には何もないんだがな」 「桐様の事か?」 「んー…まあ、そうだな」 どうせなら聞いてしまおうか。 この人になら聞いても大丈夫である様に思う。 意を決して蘭を見れば、一対の黒が瞬いて此方を見ていた。
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