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先日の事を簡単に話した。 自分と主人である人の名前が話題に上がり、しかし、その会話の内容が全く理解出来なかった事。 聞き慣れない“鬼子”という言葉が出た事。 そして、“喰われなければいいが”という言葉の意味を。 「“鬼子”とは何だ。蘭、お前、言っていたな。彼処に人が近寄らないのはあの方がいらっしゃるからだと。その“鬼子”というのは、桐様の事なのか?」 「“鬼子”…うん、そうだな。どう説明しようか」 少し長くなるが大丈夫かと聞かれ、虎吉は頷いて答えた。 主人の行動がいつも通りなら、もう少し時間がある。 蘭は手拭いを弄りながら、そうだなあ、と呟いて考え込んだ。 「私も詳しい事は知らないから、少ししか話せないんだが…お前の言う通り、“鬼子”とは桐様の事だ」 「…どういう意味なんだ?」 「“鬼子”とは、親に似ずに産まれた子、産まれた時既に歯が生え並んでいた子の事を言う。桐様はそうだったと聞く。実際に、殿様とは全く似ていないだろう?」 確かにそうだ。 二人の笑顔は全く似ていない所か、面影すら残っていなかった。
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