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拒まれている訳ではないのに、たまに距離感を感じる。
心の距離と言えばいいのか、踏み込んではいけない様な気分になるのだ。
知りたいのに。もっと深くまで。
そう思った理由は自分でも分からないが、知ればいつか分かるのではないかと思った。
にゃあ、と声が聞こえた。
何かと思って足元を見れば、見覚えのある猫が虎吉の足に擦り寄っていた。
おや、とその猫を抱き上げると、またひとつ、にゃあ、と鳴いた。
「お前、この間の猫か」
「この間の?」
「ああ。桐様が見付けられたのだが、見失ってしまってな」
耳と尻尾が茶色いが、後は真っ白な毛並みの猫だ。
人懐っこいのか、顔を近付けると、鼻先を舐められた。
「お前、桐様が会いたがっておられたぞ」
そう話し掛ければ、返事をする様にごろごろと喉を鳴らした。
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