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あの方は猫がお好きなのだろうか。 その様な些細な事でもいいから知りたいと思った。 だって、まだ何も知らない。 「蘭」 「ん?」 「私は桐様の御側にいたいと思うよ」 猫の目を見つめていると、何故か彼女の目を思い出す。 人懐っこそうであるのに、目の奥には警戒の色を浮かべていて、本気で他人を信じない。 自分には分からない深い闇を宿していて、しかし、その色に惹かれてしまう自分がいる。 あの色の理由が知りたい。 「私はあの方の事を何も知らないんだ。だから、知りたいと思う。何も知らないのにあの方の事が分かる訳がないのだから。それから決めようと思う。これから先の事は」 “鬼子”が何だ。 その様なものを恐れて何になる。 彼女はどこにでもいる、普通の少女だ。 少なくとも、虎吉にはそう見えた。 抱き上げた猫が、にゃあ、と鳴いて、くしゃみをした。
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