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丁度その時、袖の中にいた猫が、にゃあ、鳴いて、桐としずが言い争いをやめた。 二対の黒い目が瞬くのを見て、虎吉は笑いながら袖から猫を取り出した。 目を瞬かせるしずの隣で桐は、まあ、と嬉しそうに声を上げて、虎吉が抱える猫を撫でた。 「先程見付けたものですから、連れて参りました。お探しでしたでしょう?」 「ええ。会えて良かったです。有難う、虎吉様」 嬉しそうに笑う彼女の笑顔は年相応だ。 いいえ、と笑って答えて、虎吉は桐に猫を渡した。 「ねぇ、しず。猫ですよ。可愛いでしょう?」 「ええ、本当に」 柔らかく笑ったしずに満足してか、桐はまた笑う。 腕の中で猫が鳴いた。
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