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「名前は何がいいでしょう。ねぇ、虎吉様、何がいいと思いますか?」
「そうですね…呼びやすい名前が宜しいのでは?」
「桐様、名前を付けても飼いませんからね」
「あら、いいではありませんか」
「駄目です」
しずが強い口調でそう言えば、桐は唇を尖らせて、不満そうな顔をした。
何故駄目なのかと虎吉が聞くと、しずは肩を竦めて、だって、と言った。
「だって、桐様ったら、猫を見付ける度に飼いたいと仰るのですもの。いつかこの屋敷は猫屋敷になってしまいます」
「素晴らしいではありませんか、猫屋敷」
「駄目です」
貴女だって猫は好きでしょう、と言う桐にしずは駄目だと繰り返し、最後にもう一度念を押す様に駄目だと言って、部屋の中に戻って行った。
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