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こうして見ていると、本当に彼女はどこにでもいそうな普通の少女だ。
良家の息女ではあるが、それ以外は無邪気でお転婆な少女であるだけで、他と何も違わない。
“鬼子”と称されるのだって、周りが勝手に押し付けた名ではないか。
彼女には、桐、という名前があるのだ。それは彼女だけの名前だ。
自分が護るのは“鬼子”などではない。
良家の息女でも、何でもない。
桐、という名前を持つ、一人の少女を護るのだ。
周りの者の言葉に惑わされるとは、自分は愚かだった。
彼女が何者だろうが構わない。
気にする事は何もないのだ。
意地悪なのですから、と拗ねた様子の桐を見て、虎吉はくすりと笑った。
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