19/20

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/497ページ
桐様、と呼べば、きょとんとした顔で彼女は虎吉を見上げた。 大きな黒い瞳が瞬く様子を見つめながら、やはり猫の様だと思った。 虎吉がその場で片膝を付くと、桐は驚きと疑問の隠った声で彼の名前を呼んだ。 彼は彼女を見上げて、目を細めた。こうして低い位置から見上げるのは、彼女に対する敬意だ。 「必ず、貴女様をお守り致します。この命に変えても、必ず」 見上げた先で、黒い瞳が不安定に揺れた。 それから、表情が少しずつ歪み、泣き出しそうに彼女は目を細めた。 そこに、彼女の脆い部分を見付けた様な気がした。
/497ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加