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部屋で桐は書物を眺めていた様で、二人が部屋に入って来ると、顔を上げて微笑んだ。
お茶を入れて参りました、と言うしずに彼女は笑顔で礼を言った。
「あら、御饅頭ですね」
「御夕飯前ですから、少しだけですよ」
「ふふ。分かっております」
彼女は甘い物が、特に饅頭の類が好きであるらしい。
虎吉がそうだと思ったのは、忠彦や光則が良く土産にと饅頭を持って来るからだ。
しずも、実家が城下で茶屋を営んでいる為、実家に帰る度に家族から饅頭を大量に持たされるそうだ。勿論、全て桐の為である。
「虎吉様もどうぞ。一緒に食べましょう」
「はい。有難う御座います」
虎吉も最初の頃は遠慮していたのだが、桐がどうしてもと言うので、結局彼が折れたのだ。
一緒にお茶を飲んで話すのが最近の二人の日課となっている。
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