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「しず殿は凄いですね。本当に茶屋の生まれだとは思えない」
「昔からです。私がどこに隠れても、すぐ見付けてしまうのですよ?隠れんぼになりません」
「本当に仲が良いのですね、御二人は」
「何をするにしても、常に一緒でしたから」
だからか。
二人はいつも見えない何かで繋がっている様に思えたのだ。
人はそれを絆と呼ぶのだろう。
御饅頭を食べましょう、と微笑んだ桐に虎吉も笑みで応えた。
嬉しそうに饅頭を頬張る彼女は年相応の可愛らしい顔をしていて、それを見て頬が緩んだ。
彼女はまだ14歳だ。
もう14歳だ、とも言えるが、14年間の殆どをこの屋敷の中で過ごしている彼女は世間を知らない。
大人へと変わり始める年頃ではあるが、中身はまだ子供。
まだ14歳だ、と言った方が彼女には合う。
しかし、外の世界を知れば、この少女はどの様に変わる事だろうか。失望し、この笑顔が消えてしまうかも知れない。
もしそうなるのならば、彼女には穢い世界を知る事なく、世界は綺麗なのだと思わせておきたい。
この方には純粋なままでいて欲しい。
最近、強くそう思っていた。
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