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二人で他愛もない話をしていると、突然冷たい風が室内に入り込んで来た。
振り返れば、先程しずが閉めたはずの襖が大きく開いていた。
風で開いたのだろうか。
そう思うにしても、明らかに不自然だ。
虎吉は立ち上がって、襖に近付いた。
外に誰かがいる訳ではないし、だとしたならば、何故独りでに開いたのだろう。
彼が襖を閉じようと手を掛けた時、不意に彼は動きを止めた。
白く染まり行く景色の中を目を細めて見て、そこにあった人影に目を見開いた。
黒い髪、白い肌、真っ赤な唇。
白地の着物には、赤い赤い花が描かれて…―――――。
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