椿

10/26
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/497ページ
桐に対して、本当ですよ、と言って嘘を吐きたくなかった。 彼女には本当の事だけを言いたかった。 しかし、先程の事をどの様に言えばいいのか。 夢だとも真だとも言い難く、だからと言って、ただの幻覚だと断言したくもない。 あまりにも現実的すぎた。 花びらが頬に触れた感触も、拳で掴んだ感触さえも残っていた。 虎吉が言おうかどうかと悩んでいると、桐は彼の腕に触れて、微笑みながら首を傾げた。 お話し下さい、と言われている様な気分になって、終には口が動いていた。
/497ページ

最初のコメントを投稿しよう!