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桐に対して、本当ですよ、と言って嘘を吐きたくなかった。
彼女には本当の事だけを言いたかった。
しかし、先程の事をどの様に言えばいいのか。
夢だとも真だとも言い難く、だからと言って、ただの幻覚だと断言したくもない。
あまりにも現実的すぎた。
花びらが頬に触れた感触も、拳で掴んだ感触さえも残っていた。
虎吉が言おうかどうかと悩んでいると、桐は彼の腕に触れて、微笑みながら首を傾げた。
お話し下さい、と言われている様な気分になって、終には口が動いていた。
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