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椿の花は散る時、花の根元から下に落ちる。
それは人の首が落ちる様にも似ている為、武士はあまり椿を好まない。死の象徴だと言って、不吉なものだと扱うのだ。
しかし、当時の征夷大将軍、家光公の父であったあの方は椿を好んだと言われ、その跡はあちこちに残っている。
「父は嫌がったそうです。当たり前でしょうね。不吉な花で御座いますもの」
「そう言えば…私の父から聞いた事が御座います。御厨の屋敷に椿が贈られて、御当主様が困っておられると」
「まあ、御父君は父と面識が?」
「詳しくは分かりませんが、恐らくは」
父は城によく出入りしていた人だったし、御厨の人間と面識があっても不思議ではない。
尤も、幼かった為に父が何をしているのかは知らなかったのだが。
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