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そこにいた女は夢に現れたあの人だった。
赤い唇を歪めて、柔らかい笑みを浮かべていた。
「貴女の、願いは?」
桐が首を傾げて、短く問う。
女は唇を開き、細い声で紡いだ。
《わたしを、みて》
「…承知致しました」
女は満足そうに微笑むと、花びらとなって弾け、散り、消えて行った。
白く降り注ぐ雪の中で、舞い散る赤は奇妙で、また、綺麗だった。
音もなく落ちた椿は雪に埋もれ、赤がよく映えた。
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