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虎吉はそっと斜め前に座る少女に目を遣った。
椿を眺める横顔には柔らかな微笑が浮かべられていたが、その目が寂しそうに見えた。
母が愛した花。
父が嫌った花。
彼女はどちらなのだろう。
その目で何が見えているのか。
分からない状況がどうにも歯痒くて、自分自身を罵倒したくなった。
彼女には何か力がある。
自分には想像も出来ない程の力だ。
それを知ったら、自分は今と同じでいられるだろうか。
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