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恐怖に固まる笹塚。その様子を見て熊は、掌に溜めていた水を笹塚に掛けた。
「わぷっ!?」
顔に水を掛けられた際に目に水が入り反射的に目を擦る。
そして笹塚が目を開くとそこにはリンゴらしきものが差し出されていた。
「……は?」
しばし困惑した笹塚は思わず聞き返した。
「な、何だ? くれるのか?」
その問いに何と、熊は頷き横に置いてあったであろうリンゴを更に差し出す。
「は、ははは……」
笹塚は力なく笑う。緊張が解れ、一筋の水が頬を流れこぼれ落ちた。
のっそりとした動作で熊からリンゴを受け取り、食べ出す笹塚。
色々あり疲れていたせいか、笹塚はペロリと一つ目のリンゴを食べ終えた。
そして、笹塚が二つ目のリンゴを食べ始めるのを見届けた熊は湖へと歩く。
浅瀬にざぶざぶと体を進め、その眼光が水面に向けられる。
少しの間を開け、勢いよく腕を振り抜く。大量の水飛沫と共に跳んだ魚を口に加え、笹塚の隣へと戻ってきた。
少し冷静を取り戻していた笹塚はその光景を、
(木彫りの熊と一緒だな……)
なんて思いながら見ていた。
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