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あたしは変に冷静になっていて。
眩暈は頭痛に変わっていったが、それは我慢できるほどのものだった。
「とりあえずお座り下さい」
怪しいお兄さんに急かされたあたし達。
典果と多香子は先ほどのキス男のところに、腰を下ろした。
絶対イケメンだからっていう理由だ。
あんな光景見たのによく、あそこに座れるな。
「じゃ、君こっちね」
ハット男に声をかけられ、深呼吸をしてから彼の横から一人分空けたところに腰を下ろした。
早く帰らせてください神様。
本当にお願いします。
目の前にはガラス張りの壁。
フロアとレストランが、全て見渡せる。
すごいな、ここ。
多分、さっき通って来たところよりも豪華なんだろうな。
「君なに飲むの?」
ハット男は帽子の影で目が見えないが、少し厚い唇と形のよい鼻、多分かっこいい人なんだろうなと思った。
「お冷でお願いします」
「はっ?!お冷!?」
「はい、それでお願いします」
何が可笑しいんだろう。
お酒を飲みたくないし、お金もかからないと言ったらそれしかないじゃない。
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