悪夢のような一夜

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「あっ、ごめんなさいねっ。この子吐きそうって言ってて、今からトイレ連れていくところなんですよぉ」 典果はさりげなく、この肩に乗っているチャラ男の手をほどいてくれた。 さすが慣れてる子は対応も違うのね…。 「三人とも可愛いとか珍しいね。マジで飲みに行かない?俺奢るよ」 「ごめんなさい、また後でもしこの子の気分が良くなったら飲みましょ?」 多香子は愛想良く断りを入れてる間に典果に引っ張られてそのままトイレへ。 ヒールで転けそうになるも、鏡の前で並んで化粧直しをしている女の人達にまた目が点になる。 いくら彼氏が欲しいって、こんなところに来て探すのは間違ってるんじゃ…だってロクな人がいない。 「ねぇ、ここにいつまでいるの?」 「もう少しだけっ。イケメンさんとお友達になったら!」 「本当にそれだけっ!」 いやいや、あなた達には十分素敵な彼氏がいるじゃないですか。 「典果の誕生日だし、ちょっとはわがまま聞いてあげてよ、ね?」 「二人で来たらいいんじゃない。なんであたしまで…本当に場違い過ぎるよ」 涼しげな顔立ち、和美人の多香子。 顔立ちのはっきりしている外人っぽい美しさの典果。 あたしは別に不細工ではないと思うが、二人と並ぶと雲泥の差。 「誕生日…祝いたくないってこと?」 また来た、この言い方。 捨てられた子犬のような潤んだ瞳、目薬でも隠し持っているのだろうか。 「典果、いつも誘っても来ない鈴が今日は来るってすごく楽しみにしてたんだよ?」 悲しそうに俯く典果、頭を横に振る多香子。 素晴らしい二人三脚に、もうぐうの音も出ない。 「…祝いましょう」
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