零・プロローグ

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静かな夜だ 深夜に当てはまるこの時間帯では、住宅街には繁華街の賑わいなど聞こえずに静寂を保っていた。 聞こえるものと言えば、風が吹く微かな音に虫の鳴き声のみで。 そんな中、街灯と夜空の月光に照らされながら少年は歩いていた。 ゆったりとした足取りで散歩しているかのように歩く。 少年は不意に立ち止まると、そのまま顔を少し上げた。 そこにあるのは二件の家宅の向こう、黒い夜空にぽっかりと浮かぶ、家の壁に挟まれているように見えた窮屈そうな月だった。 「……俺みたいだな」 少年は自嘲気味に笑いながらぽつりと呟き、その月から視線を逸らして再び歩き出した。
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