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「睡眠薬の多量摂取だそうよ」
「そうですか」
呟くようにそう言った彼が、ノートのある一点で手を止めた。
不思議に思った私は、横からそのノートを覗き込んだ。
……“桐原麻衣”。
彼はその一点から、目を放さない。
やっぱり麻衣ちゃんに乱暴していたのは、森さん達だったのだ。
「木綿君に聞いたんだけど、桐原麻衣さんって桐原君の妹さんなんですって?」
私と彼が固まったまま動けないでいると、ふと届いたその声。
そして視界に映ったのは、海さんが目の前で土下座している姿だった……
「うっ、海さん?! そんなことやめてくださいっっ!」
私は急いで彼女に駆け寄り、その腕を取った。
「離してっ! 私にはこうするしかないのっ!! お願い理香ちゃん、桐原君、和を……どうか和を許してあげてもらえないかしら? 私にだって責任があるのよ! 和がそういうことをやっているのを知っていながら、止めることが出来なかったんだものっ!!」
そう言った海さんの肩が震えている。
……身体も震えている。
何もかも失ったように震えている。
それなのにこんな風に謝って、痛いほど彼女の気持ちが分かる。
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