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彼にとって名前など、あってないようなものである。
いったい幾つの通り名があるのだろう。
律儀にここにその名を連ねて、彼の身辺を危うくする訳にもいかないが
それはそれは沢山の名を持っている。
そうなると、もう彼の中では名は、本来のその人個人を表すという意味のものにはならない。
彼にとっての名は
彼の心の一部
断片、その場その場の感情
つまり「おどけ」の様なものである。
その「おどけ」はどれを取っても彼であり、そして彼ではない。
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