1.惑星X失踪事件

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 辛うじて背後に下がることで打撃は軽減できたものの、天川の正拳の何発かは確実にトコリコに当たっていた。 「とっさに、後ろに下がったか。あの速度で動けるとは、予想以上の実力者だな」 「それは、こっちの台詞だ。お前、さっきから何でオレ様の行動が読めているんだ」 「武道を嗜む者ならば、これぐらい出来て当然だ。私は流星空手の継承者だからな」 「流星空手だと?」 「かつて、A太陽系第三惑星、通称、地球のとある島国で生まれた空手の流派の一つだ。私は、その使い手の子孫でもある」 「空手か。オレ様のような者には無縁の世界だな。それより、少し興味が沸いてきた」  トコリコは天川を指差して言う。 「お前、一人でその実力、他の五人・・・いや、一人行方不明とか言っていたから、六人か。どれだけの実力者の集まりなんだ」 「強いのは当たり前だ。私達は、銀河連邦より任命された『七ッ星(セブンシスターズ)』だからな。その変の小者よりずっと強い」 「七ッ星?」 「聞いたことがないようだな。七ッ星は銀河連邦が警察機関と同等の権限を持たせた七人の総称だ。私は五番星(ファイブスター)、天川流星」 「つまり、お前達はこの世界における、警察に準ずる機関の人間ということか」 「いや。私達は警察機関、そのものだ。全員に警察機関の全ての権限が与えられている」  警察機関の全ての権限。それは、一歩間違えれば犯罪にも転用されかねないほどの権利であった。それを、有し許可されているということは、全員がそれだけの実力者であるということだ。  天川は呼吸を整えると、再び拳を構える。今度こそ、トコリコを拘束するつもりでいた。 「七ッ星か・・・。厄介な連中と出くわしてしまったものだ。オレ様は昔から、そういう機関と仲が悪いからな。だが、悪い・・・」  トコリコは急に笑みを浮かべた。  何をするつもりなのか、天川は思わず身構えた。 「オレ様は、そんな強い連中と戦いに来た訳じゃないんだ」  そう言うと、左腕のガトリングガンを地面に向けて発砲した。今度は、ゴム弾ではなく普通の銃弾だ。地面に命中した弾は炸裂し砂埃を起こした。それを、確認すると左足の足枷で速度を増幅し走り出した。  一見すると、砂埃を巻き上げることで天川の視界を塞いでいるようにも見えた。しかし、先程の経験でそれは無駄だと分かっているはずだ。それに、弾を使いすぎている。
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