2.星の記憶

2/22
前へ
/44ページ
次へ
「・・・また、落石か?」  惑星X。その遙か地下で微かな落石の音を聞いた男は掘削機を一旦、止めて耳を澄ませた。男は焼けた肌と逞しい肉体で如何にも工事作業員といった体だった。 「どうやら、そのようですね、社長。早いところ、地上に戻って連絡をとった方がいいですよ。もう二週間近く、我々は地下に閉じ込められているのですよ」  泥まみれの作業員は困った顔をして男に言うも、 「仕方ないだろう。まさか、この星がこんなに空洞が多いだなんて話に聞いていなかったのだから。どこまで空洞が広がっているのか、調べようにも陥没に巻き込まれた際に音波探知機が壊れてしまった。今、発明家の青年に直してもらっているが、いつ直るか分からない。第一、我が社は青年からの依頼を受けて、この星の工事をしている!地上に戻りながら、整備を進める。まさに一石二鳥だろう」  愛用の掘削機の先端を部下である数十名の社員に向けるのは、柴田宇宙開企業社長、七番星(セブンスター)、ビック・シバーター、その人であった。 「いいか?今まで、ピンチなどいくらでもあった。未知の惑星の開発工事など日常茶飯事だろう。今更、トラブルの一つや二つ、増えたところで騒ぐほどのことではない」 「それは、そうですが・・・。やはり、一度はどうにかして連絡をとらないと、まずいですよ。軍が救助の為に出動でもしたら」 「その時は、その時だ。岩茶の一つでも出してやればいいだろう。我々は我々の仕事をするまでた。それに、依頼者である発明家の御一行を巻き込んでしまった責任も我々にはある。それなりの責任をとらなくては」  ビックが掘削機で指し示す先には、余った機材や掘削した際に出た材料をその場で精錬して造った仮設の事務所があった。そこでは、現在、この星を発見した発明家である青年を中心とした一行が泊まり込んでいた。 「今時、外銀河からの来客なんて珍しい。苦労をかける訳にもいかない!少しでも早く道を整備するんだ!無駄口を叩いていないで作業を再開だ!」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加