2.星の記憶

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 社長であるビックの指揮の下、作業員はそれぞれの作業に着手した。特に決められた日程はないものの、いつまでも地下に留まっている訳にもいかない。何故なら、ビックにはある予感があった。 (この地下空洞は明かに人工的に掘られたものだ。長い年月のせいで廃墟同然になっているが。これだけ、大規模な地下空洞を建設した連中はどこに消えた。嫌な予感がする。社員には悪いが、早急にも脱出経路を造らせなくては・・・)  同時刻、銀河中央病院院長、一番星(ワンスター)、ドラキューラと賭博師(ギャンブラー)、六番星(シックススター)、ギャックは崩落の音を聞きつけ。トコリコと天川が戦っていた方を向く。音からして、相当派手な戦いが繰り広げられているなと二人は察していた。 「天川、大丈夫か?さっき、貨物室に紛れていた密航者にやられていなければいいけれど」 「その時は、私が治療をするまでだ。それに、天川だってバカではない。相手の力量を測り不利だと判断すれば、いくらでも回避、逃走する手段はあるはずだ。それより、ギャック。お前が、実際に聞き取った声はどこだ」 「もう少しだ。まだ微かに聞こえる」  行方不明者の捜索にあたる二人が向かった先は、着陸した赤い岩肌が目立つ平地とは違い鼠色の地質で成り立っている山岳地帯。いや、山岳地帯という言い方には語弊がある。正確には山岳地帯に見える建造物の跡地。かつて、この星で繁栄した住民の名残なのだろう。  証拠に鼠色に見える地質を少し掘り返せば、鉄筋のようなものが地中から発見された。明かに人工の建造物だ。  そこに彼らが乗ってきた宇宙船とは別の船が停泊してた。真新しい機体に銀河連邦軍のシンボルである星印が描かれている。 「これが、先に到着した捜索部隊として派遣された中隊か」  偉そうな軍人が言っていた十時間ほど前に消息を絶った中隊。ドラキューラは宇宙船の周囲を歩き、開口されたままの状態のハッチを見つけた。 「この中からだ」  ギャックは船内から聞こえてくる小さな声に兎耳を傾け言った。  連邦軍の宇宙船に乗り込んだ二人が感じたのは異臭だった。 「焦げた匂いに、これは血か・・・」  口元に手を当てて、船内に充満している匂いをドラキューラは冷静に分析していた。
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