2.星の記憶

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 中隊を乗せてきた宇宙船は当然のことながら、彼らが乗ってきた宇宙船より大きな構造である。設備も最新鋭のを取り入れてはいたが、壊れかけた電灯によって浮かび上がる船内からは、とても感じられなかった。レーザーガンや実弾によって壊された機材の数々。転がっているのはヘルメットで顔を確認することはできないが、撃ち殺された軍人の死体だった。 「軍法規則で未開の惑星の調査にあたる際は、一定時間間隔で通達をしなければいけない。惑星Xの場合は宇宙時間で十二時間ごとと決まっていた。通信が途絶えたのが十時間前だから・・・」  ドラキューラは殺された死体の状況を分析しながら、いつ頃、異変が起きたのかを推測していた。その間、彼は一度は口から手を離そうとしなかった。その様子を見ていたギャックは少し心配しながら彼に聞いた。 「院長、大丈夫ですか?」 「大丈夫だ。ワクチンだけは多くもってきている」 「なら、いいのですが、くれぐれも薬切れは起こさないでください。お互い無傷ではすまなくなってしまいますから」 「ああ・・・。分かっている。何が起こった分からないが、まだ声は聞こえているな」 「もちろん。あっちの方ですね」   ピクピクとギャックの兎耳は小刻みに動いて声が聞こえる方を向いていた。僅かな音でも聞き分けられる彼の耳は本当に便利である。二人は焦げた匂いや血の匂いが所々から漂ってくる船内を進み声が聞こえる場所を目指した。換気扇も停止しているらしく時々、むせ返る匂いにギャックは鼻を摘み匂いを堪えていた。ドラキューラも平静を装っていたが口元を手で押さえずにはいられなかった。  船内の死体を確認しながら進んだ二人が辿り着いたのは宇宙船の通信室であった。ギャックは兎耳をすませて、 「中にいますね」  通信室から聞こえる微かな呼吸の音に兎耳は反応し続けていた。 「誰かいるのか!七ッ星だ!」  ドラキューラは強く扉を叩くも反応は一切ない。内側から電子ロックをかけているらしく扉をこちら側から開ける方法はない。 「一応、生きているようだけど、呼吸や心拍数が低下しているな。院長、ここは俺に任せてくれ」 「分かった。中にいるは患者かもしれない手荒なマネはするなよ」 「手荒なマネね。この手の賭け事は苦手なんだよな」
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