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ギャックはドラキューラを引かせると、腰にぶら下げた小さな袋から一つ、パチンコ玉を取り出した。これで、何をしようというのか。ドラキューラは念の為、ギャックからもう少しだけ離れた。
「ちょっと、扉が吹っ飛ぶけど、勘弁してくれよ」
ギャックはパチンコ玉は親指の先に乗せると、人差し指を添えた。その構えは丁度、ビー玉やハジキを弾く形に似ていた。ギャックは一呼吸し気分を落ち着けると、ビー玉やハジキと同じように人差し指でパチンコ玉を弾いた。
瞬間、ギャックの手元から銃声のような音が響いた。
弾かれたパチンコ玉は扉に命中する。本来なら、このまま扉に弾かれてしまうのだが、ギャックが弾いたパチンコ玉は威力が弱まることなく扉の一点に加重を与えていた。パチンコ玉が命中したところから、扉が軋む音が聞こえた。やがて、扉の耐久性はパチンコ玉の加重に耐えられなくなり、脆く、崩れ、飛んだ。
「開いた。開いた」
「これを開けたというべきか。今度、一緒に考えた方がいいな」
無茶苦茶な扉の開け方にドラキューラはギャックにツッコミを入れたが、彼は聞く耳を持とうとしなかった。
これが、六番星、ギャックの力である。彼の指で弾かれたモノは銃弾以上の威力をもって飛ぶことになる。それを至近距離から防ぐ手段はまずない。
室内では予想通り、血塗れの若い軍人が一人横たわっていた。最後まで通信を試みてたようだが、ケガの具合がひどく通信機を使う前に倒れたというところか。
「あ、ああ・・・」
息が今にも絶えそうな若い軍人。ドラキューラは駆け寄ると、即座に治療に移った。自分達の宇宙船から持ち出してきた治療道具一式、こういう時ほど、医者であるドラキューラが頼りになる。
ドラキューラが軍人の治療にあたっている間、ギャックは船内を見回りながら他に生存者がいないかを確認していた。とはいえ、全員、若い軍人と同じようだった。唯一違っているところは、死んでいるという違いだけだ。
「落ち着いたか?」
若い軍人の傷口と出血を塞ぎ、独自に調合した薬を注射したドラキューラは手に付いた彼の血をメッシュのハンカチで拭いながら聞く。
薬には鎮静剤も混ぜてあったので若い軍人は少しは落ち着いた。でも、まだ呼吸は乱れているらしく正しくできていないようだ。
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