2.星の記憶

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「星の記憶との一体化って、まさか、パレスは『星人(せいじん)』になろうとしているのでは。それこそ、条約で禁止されていますよ」 「同じ軍人を射殺してきた男だ。今更、星人になることを恐れはしないだろう・・・。ギャックは急いで、瀧に連絡しろ!捜索は一時打ち切りだ!態勢を立て直すよう言ってこい!」 「分かった!」  事態は急変を告げていた。単純な捜索のはずが、宇宙を危機に陥れかねない事態になろうとしていた。もっとも、今頃、動いたところで間に合うとは思えないが。  そこは美しい場所であった。青白い光りの粒子が上へ下へ雨の滴のように動くその様は幻想的で人を魅了することだろう。  そんな美しい光景も今の彼、パレスの目には映っていなかった。支給された軍人としての装備品は所々が破れ、血で染まっていた。彼自身も無事ではなかった。肩に受けた銃弾が今も痛んでた。  ここに来るまでの間、邪魔になった指揮官と中隊の半数を皆殺しにしてきた。全ては、この幻想的な部屋の中央に鎮座している眩い光りを放つ柱にあった。彼の手には古い手帳が握られていて、細かくここに至るまでのルート、光る柱が何なのかが明記されていた。 「見つけた!見つけた!」  光る柱を見た直後、パレスは痛みなど忘れて柱に駆け寄った。地上の建造物は滅びていたが、ここだけは未だ健在だった。 「これは、私のモノだ!私こそ、これを手にするに相応しい!」  パレスは光る柱に迫ると、手を触れた。すると、柱はパレスに共鳴するように光りをより強めた。 「そうだ。分かるか?星の記憶・・・。お前を造った者の血筋が・・・!今こそ、私はお前と一つになる!一つとなって、この欲望の全てを満たす!」  パレスは共鳴する柱の傍にあった錆び付いた操作パネルを見つけると、興奮を抑えながら手帳に書かれた内容を参考にしてボタンを入力する。気のせいか、人を殺した時よりも、入力している時間が酷く長く彼は感じていた。  そして、全ての解除番号を入力し終えると、光る柱。その表面を覆っていたガラスような薄い膜が降ろされ、柱の中に核となる綺麗な宝石を手にした。  宝石は、この星、そのもの。全員が星の記憶と呼ぶもの。パレスは迷うことなく、それを銃で撃たれた自分の肩に押し当てた。
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