2.星の記憶

9/22
前へ
/44ページ
次へ
「なに、アレ・・・」  惑星Xの異変。それを真っ先に確認したのは上空を飛行していた遊牧民、二番星(ツースター)、聖風(セイフィ)=瀧(ロン)だった。彼女は惑星Xの地表に光りの亀裂が走っていること気付いた。 『瀧、聞こえるか』  何が起こっているのか瀧が困惑していると、風の流れに乗ってギャックの声が聞こえた。 「聞こえるわ。何が起こったの?上空から見ているけど、あっちこっちに亀裂が走っているわ」 『やっぱりか、こっちも連邦軍の宇宙船を発見した。そこで、生き残っていた軍人の証言等を照らし合わせて、連邦軍のパレス少佐が星の記憶を狙っている可能性が浮上してきた』 「星の記憶ですって!それって、まさか!」 『星人になるつもりだ。こっちも、態勢を立て直そうとしたが、手遅れのようだ。奴は星の記憶を取り込み星人になってしまった。おまけに、この星には条約でも厳しい管理を明記されている欲望を具現化する物質が大量にあることも確認された。星人になった以上、奴がそれを使うことは明確だ』 「星人だけでも厄介なのに、欲望を具現化する物質を含んでいるなんて」  瀧は星人と呼ばれる者の脅威を知っていた。 「私達は、この星、そのものを相手にしないといけないわけね。分かったわ、すぐに私の風信号で他の星に緊急連絡を・・・」  すぐにでも、この緊急事態を伝えなくてはならなかった。風を操る力をもっている瀧にはそれができる。すぐにでも信号を送ればいいのだが、瀧はそれをしない。している時間がなかった。 『どうやら、手遅れのようだな』 「そうね」  瀧は自分に向けられた強い殺意を感じて、連絡を取るのをやめた。そして、その殺意はおそらく、地上にいる彼らにも向けられていた。 「あなた、誰?」  空中静止状態で瀧は対峙する相手に聞いた。 「〈傲慢(プライド)〉・・・」  プライドと名乗るそいつは、背中に翼を生やした真っ黒な悪魔、ガイゴールのような姿をしていた。  プライドの返答は短かった。大きく翼を羽ばたかせると、瀧に向かってきた。 (問答無用で攻撃って訳ね!)  瀧は身体を上昇させプライドの突進を回避すると、同時に背中に回り込むと両手の風を一点に集中させ叩きつけた。風を纏う拳を受けたプライドは空中で回転しながら地上へと落下した。  もっとも、これぐらいで倒せたとは瀧は思っていない。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加