2.星の記憶

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「ダイヤキャンディーの鉱脈。宇宙でも最高に硬いとされる飴だけど、熱には弱く、冷やせば瞬時に固まる扱いが難しい食材よ」  槍の形にヘラの先をコーティングしてそれを振り回せば、瞬時にその形のままの状態で固まる。 「キャンベリン。鋭く甘い味を堪能してください☆」  異変は惑星X全土で引き起こされていたが、どういう訳か七ッ星がいる場所を狙ったかのように次々とパレスの欲望が具現化して現れた。やはり、本能で彼ら七人が危険だと判断しているからだろうか。  それでも、例外はある。欲望の塊の具現化。その中には、当然のことながら〈性欲(ラスト)〉が存在した。ラストは他の欲望とは違い、性欲的に女がいる場所を狙っていた。  ラストが狙いをつけた女は七ッ星ではなく、ビックが造らせた仮設の事務所で休息していた発明家一行の中にいた女性をだった。 「ラァァァスゥゥゥゥ」  下品に涎を垂れ流しながら事務所の入り口を破壊し乗り込んできたラストの姿は分かりやすく大猿だった。異変に気付いた発明家の一行が対抗しようとしていたが、相手は欲望が具現化した存在。そう簡単に倒せる相手ではない。もっとも、それに対抗できる七ッ星の実力が異常といえるかもしれないが。  銃撃も通用しないラストは素早い身のこなしで、一行の中でも発明家の奥さんである女性に狙いを定め動いた。 「やめろぉぉぉ!」  ラストに殴られ満足動くことができない発明家の叫びなど、性欲だけのラストには聞こえない。その毛むくじゃらの手を伸ばして、薄い衣類を剥ぎ取ろうとしてた。 『三番星(スリースター)、ファース。打席入ります』  それは、この場には不似合いな野球のアナウンスだった。いったい、どこから聞こえてくるのか。  事務所の天井が壊れる音がした。  天井を突き抜け、事務所に降り立ったのは元マフィア幹部、三番星(スリースター)、ファースは着地と同時にバットを手に構えを踏み込むと力強くスイングし、ラストを事務所の外まで弾き飛ばした。 「一番乗りで、と~ちゃくってか」  ファースはニヤリと笑みを浮かべて、事務所のテーブルに置かれていたタバコを一本拝借すると口にくわえた。 「第一打席、送りバンドってとこかいなぁ」
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