2.星の記憶

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「あ、あの、あなたは・・・」  颯爽と登場したファースに驚く発明家。まさか、天井を壊して助けに入るとは思いもしなかった。  驚いたのはファースも同じだった。若手の発明家とは聞かされていたが、事務所にいた全員が二十代にも満たない若い子達ばかりだったから。 「若手の発明家とは聞いておったが、まさか、ここまで若い奴らとはなぁ。まあ、ええ。女やガキに手ぇだす奴ぁ、人間じゃねぇ。そこの大猿!」  ファースは起き上がろうとしていた大猿に啖呵をきった。 「てめぇのようなド外道は、さっさと退場しろや!する気ないんやったら」  ファースはそこいらに落ちていた石を拾い上げると、バットで打ち込み、野球のボールのようにラストに向けて飛ばした。起き上がろうとしていたラストに容赦ない追い打ちである。 「俺が引導を渡したるでぇ!」 「社長!事務所の方で爆発音が!」  作業員がビックに報告するも、彼は今、それどころではなかった。 「何で工事の邪魔をするんだ!」  掘削機を使い、何度もそいつに攻撃を仕掛けるビックであったが、まるで攻撃が命中していなかった。無理もない。相手はビックが攻撃を仕掛ける度にお地中に潜ってしまう巨大なモグラのような生き物なのだから。 「〈嫉妬(エンヴィー)〉」  モグラは自らをそう名乗っていたが、ビックには心当たりのない名前だ。 「さっき、周囲が光ったと思ったら、急に現れて工事の邪魔をしやがって」  エンヴィーが暴れたことで、これまで綺麗に整備してきた地上への通路は全てに穴が開けられ荒らされてしまった。  おまけに事務所の方でも異常事態が起きてた。 「工期が遅れたら、貴様のせいだからな」  工期以前の問題だというのにビックはそのようなことは一切、考えていなかった。工事を邪魔してくるエンヴィーを退治しないといけないというのに、まるでモグラ叩きのような状況が続いていた。 「仕方ない」  ビックは諦めた。戦うことをではなく、工期に間に合うのを。これ以上、エンヴィーに好き勝手暴れられたら確実に間に合わなくなってしまう。少しでも遅れを減らす為には、躊躇などしてはいられなかった。 「依頼人には悪いが工期が少し遅れるかもしれない。こっからは、ピッチを上げさせてもらう」  ビックは掘削機のエンジンレバーに触れると、それを大きく引っ張った。
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