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「こいつ!照明弾も撃てるのか!」
光りで満たされた空洞内で天川は思わず上を見上げた。チャージガンと組み合わされたライト弾に殺傷能力はない。トコリコが狙っていたのは急激な光りによって、天川の視界を奪うことだった。どんな暗視装置を付けているのか分からないが、僅かな光りを増幅するのが暗視装置の基本だ。急激な光りを浴びせられたら装置は耐えられず故障するはず。
光りに気をとられた天川の顔面にトコリコは右手の拳で殴り、彼を後ろに飛ばした。
「これで、形勢逆転だ」
トコリコはチャージガンを天川に向ける。
「分かっていると思うが、今度は本気だ。殺しはしないが、当分の間、動けなくさせてもらう。あまり、しつこい奴はオレ様は嫌いなんだ。この暗闇の中で、オレ様を追いつめた技量。それには、敬意を払う。だから、聞いてやる。オレ様を逃がすか、逃げられるか・・・どっちが・・・」
光りが灯される中、トコリコは天川に聞く。右手の攻撃を受け、動きが鈍化してた天川は呼吸を整えながらも、サングラス越しにトコリコを見た。その表情には、まだ諦めの色は浮かんでいない。最後までトコリコとやりあうつもりでいるようだ。
しかし、右手で顔を殴られた。出血もそうだが、掛けていたサングラスにもヒビが入り壊れた。
「・・・・」
サングラスが壊れ、その下から現れた天川の顔をみてトコリコは言葉を失う。
天川はこの圧倒的に不利な状況でも屈せず構えを解こうとしない。
「逃がすか、逃げられるかだと?舐めるな、若造が・・・。どちらの選択肢も私にはない!私の選択肢は逃がさない。その一つだ!」
何故、天川は暗闇の中でも平然と戦っていられたのか。どうして、目が眩むほどの光りの中で平然としているのか。
その答えは、天川のサングラス、その下にあった。そこには、あるべき『モノ』がなかった。ソレが無かったから、初めから暗かろうが、明るかろうが関係なしに戦えていた。
「両目が『ない』状態で戦っていたのか」
そこには、『目』がなかった。そういう種族というのではなく、両目には深い傷を負っていた。その傷によって、天川の目は両目とも完全に潰されいた。
天川はサングラスが外れた自分の顔に触れ、
「サングラスが壊れたか・・・」
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