1.惑星X失踪事件

3/11
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
 薬品の匂いが充満した貨物室はいる、その独特の匂いでいるだけで気分が悪くなりそうだった。 (新世界到着と同時に薬品の匂いで、お出迎えとは・・・。ここは、どんな世界なんだ)  トコリコは異世界を旅するトレジャーハンターである。世界を移動し辿りついた、新たな世界。何かの乗り物の中にいるというのは分かる。しかし、同時に妙な気分でもあった。フワフワと身体が浮きそうで薬品の匂いと混ざって、ますます気分が悪くなりそうだ。それに、静かだった。機体のエンジン音はしていたが、外からの雑音は一切なく、おかげで客席に座っている彼らの声とモニターに映る軍人の声はしっかりと聞こえてた。 『その星の名称は決まっていない。その星は仮称として惑星Xと呼ぶことにしよう。星の構造がどうなっているか、どんな生物が存在しているか。全ては不明のまま。分かっていることは、惑星Xの土壌には電波を拡散する物質が多く含まれているという点だけだ。現在は惑星Xを発見した発明家によって電波の送受信を可能にする簡易衛星が打ち上げられているので、地表での通信不良の問題はほぼ、解消している。お前達には、惑星X到着後、七番星及び中隊の捜索にあたってもらいたい。それと、惑星Xの正確な情報が欲しい。『星の記憶』を発見し、情報を読み解き、本部に送信を頼む』 (星の記憶?)  軍人が語る言葉を盗み聞きしていたトコリコは目を輝かせた。  星の記憶。実に神秘的な言葉の響きである。それは、どのような代物なのかトコリコは興味を持った。 (どうやら、星の記憶と呼ばれるモノがあるらしいな。あの言葉から察すると、誰もまだ見つけ出していないようだ。丁度いいな。どんなモノか知らないが、良さそうなモノなら、オレ様のコレクションに加えてやろうじゃないか)  トコリコは笑う。彼にとって、知らぬ物ほど価値がある。それを探求する心。それこそが、彼にの一番の原動力なのだ。  しかし、油断はできない。モニターの軍人と会話している六人。異世界を旅してきたトコリコは直に感じていた。あの六人は並々ならぬ実力者であると。異世界から来たトコリコにとって、少なくとも今の段階では『味方』ではない。だから、不用意に姿を現すのは極力避けた方が得策だった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!