2.星の記憶

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 さすが、末裔といったところか。何百年かは分からないが遙か昔の出来事だというのに、祖先が遺したこの星を狙って動く様はまさに欲望、そのものだ。  しかし、トコリコは一つ、気になることがあった。この星の末路もそうだが、終焉をもたらした男の正体だ。明かに、この世界の人間ではない。トコリコと同じ異世界の存在だ。そんな奴が、どうして一方的な殺戮を行ったのか。知りたいと思うも、これは星の記憶だ。再生された映像でしかない。 『おや・・・。少し、現在まで進め過ぎたか』  この星の話は、あれで終わり。そう思われたが、まだ続きがあった。  星が滅ぼされてから数百年後。発明家の一行が星を発見する数日前の記憶だ。星の記憶が収められた場所に足を踏み入れる見慣れぬ男がいた。歯車の刺繍が施された修道服を着た一見すると神父のような男は残念そうな顔をしていた。 「彼は【憤怒】だ。怒りはもっとも、純粋で原始的な負の感情。怒りは相手がいるから生まれる。相手を見下すから生まれる。彼が、この星に制裁を加えなくとも、滅びていたことだろう。それが、早いか遅いかの違いだ」  次の瞬間、彼は姿を消していた。映像が途絶えた訳ではない。それは、トコリコと同じ異世界へと姿を消した証だった。 『私が、ここを訪れるよりも前にやってきた者がいたのかまあいい』  最後に見えた記憶は何だったのか。ただ、星の記憶に記録されているほどだから、重要な何かを彼は握っていたのだろうか。 『さて、事情は飲み込めただろうか』  パレスは両手を広げて役者のようにトコリコに聞く。 「事情?」 『私は星の記憶を手に入れ、星人となった。だったら、次に何をするか。客人なら容易に想像できるだろう』  パレスの問いかけにトコリコは面倒そうな顔になる。  次に何をするのか。 「そんなの、オレ様でなくても分かるだろう」 『ほぉ?』  トコリコはパレスの返事を待たずして左腕をガトリングガンに変化させ、銃口を彼に向けた。 「この星の力を使って、銀河の征服ってところか」 『その通り!人間の欲望は常に果てしない!』  両手を広げたパレスの手から青白い光りが放たれた。それは、星の記憶から生み出したレーザーの一種であった。  トコリコは放たれたレーザーを回避すると同時に、照準をパレスに合わせた。 「ガトリング×アイアン」
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