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ファースは破片を拾っては球の代用品として次々とバットで打ち飛ばした。考えもなしに向かってくるラストは確実に球に被弾していたが、立ち止まることなく向かってくる。
「えらい頑丈やな」
粗方、落ちていた破片を打ち尽くしてしまったファースはピンチのはずなのに、困った顔をしていなかった。むしろ、この状況を楽しんでいるかのようだ。
「あの・・・。あなたは、ビックさんと同じ」
「そうや。俺も七ッ星の一人や」
ファースに言われ事務所の奥に隠れていた発明家に聞かれ彼は答えた。
「ホンマはビックなんか放っておいても良かったんやけど。女、子供が襲われておるんじゃあ、見逃す訳にもいかへん」
「放っておくって・・・。貴方達は仲間じゃないんですか?」
この状況であっさり、ビックを見捨てるようなことをいうファースに発明家は驚く。同じところに所属しているのに見捨てるなど考えられなかった。
「仲間ァ?冗談じゃないで。俺達は全員、仲間やない!」
ファースはバット一本で向かってきたラストの攻撃を捌きながらキッパリと断言した。
「仲間じゃないって!」
「ガキィ。覚えておきや。仲良しごっこしたかったら、公園で遊んでればええ。俺はずっと、暗黒街のマフィアで幹部を務めてきたんや。そりゃあ、醜い世界やったで。同じ組織でも噛み殺し合いや。誰もが、自分が一番になろうと、表向きは仲間ぶりながら、裏では裏切り、腹の探り合いや。俺はなァ、そんな世界に嫌気が差したんや。だから、組織を抜けた。カタギに戻る時、腕を一本もってかれたが、大したことない」
「腕を一本って、あなたには立派な二本の腕が・・・」
「ああ。そういえば、言うてなかったな。俺は今でこそ二本腕やが、昔は三本やったんや。俺は宇宙でも珍しい三本腕の一族の出でなァ・・・。まあ、昔話はええやろう」
ファースは後退していた足を止めると、素早くバッティングの構えをとると、大振りでラストを弾き飛ばした。
今度は遠慮なく。
バットで弾かれたラストは、また大きく飛ばされ岩盤に全身を打ち付けられた。
尽かさず、ファースはバットを手にラストを追いかける。
「覚えておきや。この世で大事なのは仲間やない。ただ背中を預けることができる奴らなんや」
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