1.惑星X失踪事件

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『間もなく惑星Xに到着する。簡易衛星を浮かべているとはいえ、電波は快調ではない。この通信も厳しくなることだろう。繰り返し言うが、到着後、直ちに行方不明者のそう・・・』  通信は切れた。いや、強制的に切られた。入れ墨の男が面倒になって通信を一方的に切ってしまった。 「こっちはガキとちゃうでぇ。あんま、しつこく言うてばっかいると嫌われるでぇ。なあ、流ちゃん」 「あとで、大目玉をくらっても知らないからな」  流ちゃんと呼ばれたサングラスの男は呆れたように言う。 「くらう訳ないやろう。こっちとて、しんばらくぶりのメンバーの招集されて嬉しいんや。ホンマ、瀧(ロン)ちゃんも、ポロちゃんも綺麗になったやないか」 「やめてください。しばらくぶりって、ファースさんとは一週間前にお会いしたではないですか」  瀧と呼ばれたポニーテールの女性は顔を赤らめていた。ファースと呼ばれた入れ墨男は、 「女なんて、三日もあれば変わるもんや。一週間なんか、その倍以上や、美しさも増すって」 「そうだよ。瀧ちゃん。可愛いって言われたのだから喜ばないと」  ポロと呼ばれたエプロンをつけた女性はあどけない顔で顔を赤らめている瀧を茶化して言う。 「ちなみに、俺はどうだ?」  兎耳をピクピク、動かしながら男は真面目な顔をして聞いてくる。 「兎耳をしていれば可愛くなるという訳でもないだろう。ギャック」  ファースに取って代わり、医者である白髪の男は兎耳のギャックに言う。 「そうですか、院長。俺は、俺で一族の兎耳を気に入っているんだがな」  ギャックは不満そうな顔をしていたが、実際、三十代も半ばに入ろうとしている男に生えた兎耳を見せられ、可愛いかどうか聞かれると簡単に、可愛いとは言えない。というより、認めてしまうと、色々な人達に失礼になると思う。 『間もなく、当機は惑星Xに着陸します』  そんな遣り取りをしている彼らを無視して、船内アナウンスが流れた。アナウンスが流れると、さっきまで騒いでいた六人は座席のシートベルトで全身を固定しだした。トコリコといえば、貨物室の中だ。当然、座席は見当たらない。本当は簡易ではあるが壁際に座席は用意されているが、白髪の男が積み込んだ荷物のせいで座るのは無理だった。周囲のパイプを右手で掴み、それで身体を支えるしかない。
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