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「どうかしたか?」
「いや。院長。今、声がしなかったか?あっちの方から」
ギャックは降ろされたばかりの器材の山を指差して白髪の男に聞いた。白髪の男は器材の方を見てたが、幸いなことにトコリコのいる場所より少し向こうのこの星の岩を見ていた。
「・・・誰かいる気配はしないが・・・。器材の音か風の音じゃないのか」
「・・・そうかもしれませんね。風の加減しだいでは人の声に聞こえることもありますし」
トコリコは運が良かったとしか言いようがなかった。もし、異変に気付いて器材に近付かれ、発見でもされたら無益な争いに発展してたかもしれない。
白髪の男とギャックは気のせいということにして器材から目を逸らすと、降り立った彼らを見た。
「院長。これから、どうしますか?」
「とりあえず、全員、別れて捜索した方がいいだろう。私はギャックと一緒に行動する。彼の聴力は本物だからな。負傷者を発見次第、治療に当たる」
白髪の男は客席に積んでいた医療器具や薬品の小瓶を改造した白衣の内側のポケットにしまいながら言う。
「俺は一人で勝手にやらせてもらうで。ビックちゃんを探した方がおもろいと思うし」
ミーティングの意味がまるでない。大事な打ち合わせだというのに、ファースは一人で行動に乗り出してしまった。
一人の勝手な行動をキッカケに彼らも好き勝手に動き始める。白髪の男とギャックは仕方ないといった様子で一応と物音が聞こえた方角へと器材を飛び越え走り出した。正確には白髪の男は走って、ギャックは兎のように飛び跳ねてであるが。
「それじゃあ、私は上空から捜索にあたるわ」
そう言って、瀧は両手を握りしめた。すると、彼女の手から突風が発生して身体を浮かせた。どうやら、それが彼女の力のようだ。
「だったら、私は・・・」
「菓子の材料を探しに行くな。私達の目的は、行方不明者の捜索だ」
「わ、分かっているわよ。天川さん」
サングラスの男、天川に見透かされ釘を刺されたポロは苦笑いを浮かべてごまかそうとしてた。
「探しに行ってくるからね~」
ポロは天川に手を振り走り去った。おそらく、行方不明になっている者を捜索するのは二の次で、この惑星Xで菓子作りに適した食材を探しだすつもりでいるのだろう。
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