1.惑星X失踪事件

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 天川流星はそんなことを思い浮かべつつ、深い溜息をつく。 「毎度、毎度のことながら、呆れるな。こんな調子で、宇宙の治安を維持できるのか?あまり、好き勝手やっていると資格を剥奪されてしまうかもしれないというのに。いや、そもそも、その前に信用を無くすか。そう思うだろう、密航者」  天川は振り向きもせずに、山積みにされた器材の中から脱出しようとしていた密航者であるトコリコに問いかけた。物音を立てないように、気を付けながらこの場を立ち去ろうとしていたトコリコ。天川はそれを易々と見抜いていた。  最初、トコリコは答えようとせず黙っていたが、 「密航者の件は私に任せて捜索だ。何の目的で、銀河連邦の宇宙船に乗り込んだか知らないが、不正に乗り込まれた以上、一応、取り調べうぃしないといけないからな」  天川は適当に喋っている訳ではなかった。トコリコがいる方を向くと、拳を構えた。 「やっぱり、こうなるのか。よくまあ、オレ様も毎度、毎度のことだがよく不本意な事態に巻き込まれるな」  これ以上、隠れているのは無駄と判断しトコリコは物陰から姿を現し天川と対峙する。 「不本意?密航しておきながら、不本意とはどういうことだ」 「好きで密航する奴なんていないだろう。着いた場所が、たまたま、あの船の貨物室だっただけの話だ」 「着いた場所だと?妙な言い方をするな。それでは、まるで、そこに突然、現れたみたいではないか」 「そんなところだな。毎回、どこの世界のどこに到着するかは決まってなくてな。唯一の難点なんだ」  トコリコはそんなことをぼやきながら天川との間合いを一歩ずつ詰めた。 「運が良ければ、いいんだが。運が悪いとお前のような強者と出くわしてしまう場合もある」  右腕の腕輪を発動させる。  左腕の腕輪が銃器に変わるのならば、トコリコの右腕の腕輪が増幅するのは『力』だ。右腕の腕輪がトコリコの手を包み込むと光り輝く手のようになった。 「悪く思うな。オレ様を見逃してくれたら、こんなことをしないですむんだが」 「悪い冗談を言うな。密航した上、怪しい言動。何もせずに、見逃す訳にはいかないだろう。まずは、名前と所属から教えてもらう」
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