第2章の続き

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 大きな借金を作り、ヤクザに追われ、九州から女房子供を連れて逃げてきている坂井の様に、警察の介入しないケースもあるだろう。  これらは極端な例だが、きつい仕事故に慢性的な人手不足問題を抱え、そうした者達にさえ門戸を開かざるを得ない経営側と、きついと判っていながらも、生きて行く為にはそこを頼るしかない者達双方の利害が一致した雇用関係がそこにはあるのだ。  坂井曰く、新聞販売所は人生の墓場で、ここに腰を据える者達は人生の落後者だと言う。  確かに、坂井にとってはここから這い上がり、その人生が再び陽の目を浴びることはないのだろう。  自分がそうだからこそ、自分の様な人生を歩むな、お前はまだ若く十分にやり直せる、ここで終わっては駄目だとはっぱを掛けてくれるのだろうが、俺は坂井の言葉の全てを正しいものとは受け止められない。
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