第2章の続き

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 俺はあの場で、体だけでなく心までも千里を裏切り、真理子を一人の女として純粋に求めていた。  下半身の欲求よりも、まずはこの腕に抱きしめたい、その唇が欲しいという気持ちの方が強かった。  正直、所長の出現には驚かされた。  だが不思議と嫉妬心は湧かなかった。  いや、今思えばそう自分を抑えこんでいたのかも知れないが。  真理子にもう一人の男が居るという事実を知った。  ただそれだけのはずだった。  しかし、暗く狭い風呂場で息を潜めている間、己の心に沸き上がった感情は違っていた。  あのヤクザに女房や本命の女がいるのかどうかは正確に分からないが、おそらく真理子とは愛人関係だろう。  もちろん所長には女房がいるのだから同じことが言える。  この俺を含めた三人の男が、寄ってたかって真理子を情婦としか捉えていない。
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