第2章の続き

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 のっぴきならない事情が有るにせよ、あれだけの器量の女が、こんな所でこんな人生を送らなければならない理由――。  金の為なのだろうか。  それとも何か弱みでも握られているのだろうか。  いずれにせよ、その悲しい現実に激しい憤りを感じた。  俺は一応独身だ。  所長は子供の事どころか、千里の存在すらまだ知らない。  もしあの場で出ていっても、身を引かざるを得ないのは、俺ではなく所長の方だ。  それならば、いっそこのまま風呂場から出てしまおうか、という衝動に駆られもした。  しかし、真理子があの男2人を愛しているとは思いたくないが、納得の上で付き合っているのかも知れない。  あの場で困っているかに見えた真理子を救うことは出来ても、事情を知らぬまま勝手な行動を取ることで、後々困らせることになりはしないか。  そう考えて何とか堪えた。  いや、自己保身の為の打算もあった。
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