《 序章 》

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そう。 この情景を創り出したのは紛れもない自分自身だ。 戦陣を率いて、その先頭に立ち、敵を討ち払う。国の為に大切な人々の為にと、心を殺して戦場に立ってきた。護る為にこの手で何百何千、何万もの敵兵の命を奪い、戦場を焔で焼き尽くして荒れ果てた大地にした。 国に帰れば英雄扱い。 羨望の目で皆が見てきた。国王までもが畏まる始末。数え切れないほどの命を奪ってきたというのにだ。 それでも、人は皆『大魔導師』である自分を敬い奉った。まるで神であるかのように。 しかし、この手はどんな殺人鬼の手よりも血に濡れている。自分の業は地獄に堕ちてもまだ足りぬだろう。 『化け物』 『大罪人』 そんな言葉が幾つも自分に投げかけられた。 『人に非ず』 『魔王』 全てを焼き尽くすだけの傀儡人形。情のない獣(ケダモノ)。 あぁ、 自分は何を間違ったのだろうか? ただ、大切なものを護りたかっただけじゃないか。この力を人の為に使いたかっただけではないか。期待に応えたいと、そう、思っただけだなんだ。
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