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「アグニ…………」
黄昏時。
レオンは静かに空を見上げた。
「もう……いい…………やめたい。こんなことは、もう、やめだ」
一本だけ
焼けもせず折れもせず残ったシクラメンの花。その花に、視線を落とした。
いくら救っても、そのために失われる命の方が多い。護る一方で傷つけるものがある。罪は、業は己が上に積み重なるばかり。
こんなことを繰り返して護ったとして、何の意味があるんだ。自問自答を、何度も何度も繰り返したけれど、答えなんて決まっていた。
失望だろうか…………。
どうでもよくなった。
この世界は酷く醜い。
人は争いをやめず、戦争がなくなることはない。
それなのに、そんな彼らを、国を……自分が護って……………。
後に残るのは業火に巻かれた地獄絵図だけじゃないか。
無残な骸に、
血に濡れた大地に、
突き刺さる折れた矢。
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