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ちなみに、自分がいるのは一番後ろの一番右端窓際の席。
これはさすがにやばい。
そう思い、急いで教科書を鞄から出して開いたはいいが、鍋と柄杓を借りてくるのを忘れていたことに気づき、はっとする。今日の実習に必要な材料など、当然の如く揃っていないわけでして。
しかし、時すでに遅しというやつだ。
「レオニダス・フリーク。私の講義は、そんなにもつまらないのかね?いつもそうして気味の悪い笑みを浮かべているが」
笑みなど浮かべていたのだろうか?
「そうかそうか、聞く価値も見る価値もないと、そう言いたいのだな?」
いやいや、そこまでは言っていない。せいぜい、その声に含まれる睡眠導入剤の効果が効いて眠くなる程度のことだ。何ら問題はない。
レオニダスもとい、レニは首を振った。
ボサボサのざんばら髪が揺れる。色は綺麗な薄桃がかったプラチナブロンド。前髪も放置されて伸ばしっぱなしのために、顔が半分隠れてしまっている。見えているのは口元だけ。
「なら、前に来い。この痺れ薬の解毒薬の調合を、皆の前で披露していただこう。どうやら、君は、この講義に出ていても無駄だとお考えのようだからな」
本当に、この展開はすこぶるまずい。何がまずいかって?そんなの決まっているじゃないか。お決まりの展開というやつだ。
レニはゆらりと体を揺らして席を立つと、傍らに立てかけていた杖を手に階段を降りていった。大理石の床に杖を突く度に、カツンカツンと杖先についた金具が小気味よい音を立てる。
長すぎるローブの裾は床をすって埃や砂にまみれ、誰かに踏まれたり自分で踏んだりでずたぼろだ。
ふと、
何かに躓いて転んだ。
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