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少年の名はレオンハルト・ベルグマン。
魔導特別専攻科クラスにおいて一番の実力を持っている。当然人気は高く、その上、誰にでも優しい。だから、女子にもモテる。
自分とは『対角』にいる存在だ。
「イラスムス。後で私の研究室に来い…………フリーク……君は少し怒ることを覚えたらどうなんだ?」
無表情だが僅かに呆れた様子でレニが教壇に上がってくるのを見守るサラン。エルヴィエラが教授のことを睨みつけていたが、彼は気にする様子を見せない。
普通は教師といえども、貴族の子女には気後れして言いたいことも言えなくなるものだ。教師も人間だ。金や権力を振りかざされてはどうしようもできないから。どうしても特別待遇をしてしまうのだろう。
しかし、サランはそういった待遇をしない。
彼にとっては皆同じ。
ただの十八の餓鬼共なんだそうだ。だから、どんな偏見もそこには存在しない。
レニは教卓に置かれた鍋の前に立った。
で、
どうしようか?
お決まりの展開ならば、ここで僕は完璧な解毒薬を調合して見せてしまうのだろうな。そう、ものの数分でね。でも、考えてもみろ。授業中に教科書も出さずに空を見上げて涎垂らしているような奴に、そんな芸当が可能だとでも?
まぁ、僕が『レオン』だったらできたのだろうけど。生憎、僕は『レニ』だ。
鍋とその隣に用意された薬草達を見比べて首を傾げた。
本当に、
どうしようか?
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