迷い

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「まあ、久々に神崎さんのお酒が飲みたかったから良いんだけどね」 出来上がったばかりのお酒を一口飲んだ。 「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです」 神崎さんは嬉しそうに笑い、サービスですとチーズの盛り合わせの皿を俺たちの前に置いてくれた。 「ラッキー、ちょうど小腹が空いてたんだ」 「すみません」 真っ先にチーズに飛びつき口に放り込んだ山下に恥ずかしくなり、神崎さんに謝った。 「いえ、喜んでもらえて良かったですよ」 嫌な顔一つしないで、そう言うとスッと俺たちの前から離れ、カウンターの隅の席に座る女性の方へと行ってしまった。 山下は彼の事を“マスター”と呼ぶが俺は彼の事を“神崎さん”と名前で呼んでいる。 マスターという響きが何となく『年配の男性』のようなイメージがあり、明らかに俺たちよりも10歳近く歳下の彼をそう呼ぶのに抵抗を覚えてしまい、名前で呼ぶようにしているのだ。 .
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