迷い

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「マスター、ジントニック2つ」 店に入るや否や、山下が勝手に注文をした。 「おい、車で来てるんだから飲まないって言っただろ?」 「車は会社に置いてタクシーで帰ればいいだろ?そのために、ここまで歩いてきたんだから」 慌てて止めにかかる俺に佐藤はそう言ってマスターに、もう一度酒を作ることを頼んだ。 ここは会社の近くにあるバー。 落ち着いた店の雰囲気とお酒の味。 何よりマスターの人柄に惹かれ、ここ数年、度々店に足を運ぶようになっていた。 「相変わらず山下さんには敵いませんね」 渋々、カウンター席に腰を下ろす俺の目の前に作ったばかりのお酒を置きながら、この店のマスターの神崎さんが笑った。 .
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